ゲーム会社に就職するための最短経路

そんなものはない。そんなに就職したければひたすら手を動かしていろ

「ゲーム会社に就職するためには」論

近頃、Twitterで「ゲーム会社に就職するためには」という話題をよく見かける

具体的な引用は避けるが、見かけた意見はこうだ。

  • ゲーム系の専門学校はやめておけ。大学に行け
  • 一度落ちたくらいで諦めず、何度も応募しろ
  • 最初から大手を狙うな。落ちたら中小に応募するって心構えじゃ間に合わない
  • 個人でゲームを作れ
  • 最新ゲームについていくためにPS5くらいは買っておけ

いろいろな意見があるが、今本気でゲーム業界を目指している人は、すべて聞き流してもらっていいと思っている。これらの意見は、自分はたまたまそれでうまく行ったという生存者バイアスであったり、自分の会社にはこういう人がほしいという意思表明だったりするからだ。まあ、特定の会社しか狙っていないというなら、その会社に所属する人あるいは社長の意見には従えばいいと思う。

ただ、一つ間違いないと思うことはある。「ゲーム会社に就職したかったのにできなかった者は、手を動かしていなかった」ということだ。

(なお、筆者はゲームプログラマであることから、以後本記事中での「ゲーム開発者」はプログラマのことだけを指すこととする。アーティストやプランナーとしての就職を考えている人は、その職種の人の話を聞いてもらいたい)

私が見てきた新人ゲーム開発者

私は四年制大学を卒業したあと、運良くゲーム開発会社に採用していただき、それから計2つのゲーム会社で、併せて4年働いている。ジュニアクラスを脱した程度の経験しか積んではいない。そんな短い業界歴ではあるが、ゲーム開発の最前線に新卒で就職してくる人の中に、全く何もできないという新人はみたことがない。

業界内の知人から聞くところによると、ごく稀にからっきし駄目な新卒が入ってくることはあるらしい。が、それはごく少数の例だ。

(なお中途は別。業界に入って以降全く努力せずなんの戦力にもなれないのに、転職活動は上手で転職成功する人はそこそこいる)

ゲーム業界しかしらない自分がこんなことを言うのはおこがましいが、ゲーム業界に入ってくる新人の平均値は、他の業界と比べてとても高い方だと思う。

ゲーム専門学校の存在

ゲームクリエイターという職業は現在とても人気がある。人気があるということは、業界を志望するライバルも自然と増える。競合が激しくなればなるほど、生き残り就職できる人らのレベルが上がるのは当然だろう。ただ、業界の新人のレベルが高いのは、他にも理由があると考えている。

一つはゲーム専門学校の存在。専門学生は就活の一環として、年に数度開かれる発表会で現役社員を前に自分の作ったゲームをプレゼンする。ここで発表される作品の大半は箸にも棒にもかからないクソゲー、あるいはゲームにすらなっていない、発表に間に合わせただけのダメ作品なのだそうだ。

ただ、そんな中でも光る作品はある。1学校1クラスあたり、5-10%はプロが唸るような作品を提出してくる。そんな数%の優秀な学生と、一部の、作品の出来はイマイチでも他で光るモノがあり将来性を買われた学生が、ゲーム業界に就職している。新卒就活でよく聞かれる、「学生時代頑張ったこと」を具体的な作品として仕上げられた人だけが、業界の門をくぐることができる。

大学生には、そのような作品発表会の場が設けられることは少ない。だが、先述した優秀な専門学生と比べても、採用するに足ると判断された人が就職できている。

就職するのに専用の免許がいるわけでもない、そんなゲーム業界に就職するための専門学校の存在は、間違いなく業界のレベルを引き上げている。

ゲーム会社に就職する人らは皆どうかしている

商業ラインで売るに足りうるゲームを開発するには、高く幅広い技術を要する。だからこそゲーム開発は楽しいし、そんな開発の一部に携われていることに誇りを感じている。

だが、所詮ゲーム開発はゲーム開発なのだ。ゲームは人生を豊かにするが人類に不可欠なモノではない。

ゲーム大好きでゲームクリエイターに憧れた子供は大人になるまでに多くのことを学ぶ。我々が生活するのに欠かせない仕事があり、ゲーム開発よりももっと直接的に人の生活を良くする仕事があることを知る。それでもなお、ゲーム開発がしたいと思う人が今ゲーム業界で働いている。

加えて、ゲーム会社の給料は低い。もうほんと低い。ここ10年で急速に改善されてはいるが、求められるスキルに対してもらえる給料は少ない。一緒に働いていて、これだけのスキルがあるなら、他の業界に転職すれば何百万も給料が増えるだろうに、と思う優秀な方を沢山見てきた。

ゲームのビジネスモデルの特異性故、給料が少なくなりがちなのは仕方ない。それでも僕らはゲーム会社で働いている。損得勘定よりも、ゲームが好き、あるいはゲーム開発が好きなどといった理由を優先して、ゲーム会社で働いている。

それでもゲーム会社の就職を目指すなら

強力なライバルと競い、安月給は覚悟の上で、なおゲーム業界を志望する人には、是非手を動かし続けてほしい。面接までに、具体的な、一定ラインの品質を超えた「○○を作った」といえるようなものを用意すれば、どこかには引っかかると思う。学生時代に凄まじいゲーム作品を作ってしまうようなスーパー専門学生と戦うのなら、自分もスーパー専門学生になるか、それに対抗できるだけの別の何かを作るしかないのだ。

ただ、健康第一でね。